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後藤教会長

~教会長のいい福通心(つうしん)135号~

今回も、1985年10月の「佼成」開祖さまご法話、「人生は出会いである ~それを活かすにはどうすればよいか~」から学ばせていただきます。


○現実の功徳も必ず生ずる

魂や心の問題ばかりではありません。いま言った「素直な心」や「愛情」は、人生の現実問題においても、小さな出会いを思いがけない方向へ展開させるものです。

化学者の池田菊苗博士は、ある夕食に出された吸物がたいへんおいしかったので、「今夜の吸物は特別にうまいねえ」と言いました。すると夫人は「そりゃあ、昆布でダシを取ったからですよ」と事もなげに答えました。

何事にも心の扉を開く習慣のない人だったら、それだけでおしまいになったでしょうが、博士は「なぜなのか」という興味を覚えました。そして昆布を分析し研究した結果、それがグルタミン酸ナトリウムのせいだと解明しました。後に世界中の食卓に乗るようになった「味の素」は、こうした一椀の吸物との出会いから誕生したのです。開いた心、素直な心を持っておれば、小さな出会いからも、このような素晴らしい展開が生ずるのです。 

また、愛情をもってあらゆる出会い、あらゆる縁を大切にする企業は必ず発展します。 

化学ぞうきんで有名なダスキンという会社があります。創業者の鈴木清一さんは、小さな月報に会社の実情や社長からの願いを載せて給料袋に入れ、社員の奥さんや両親へも協力を訴え、これを「社長からのラブレター」と名づけていたそうです。

またこの会社では、社員ナンバーというものがあり、これは入社順につけられ、たとえ会社を辞めたり死去したりしても、その社員ナンバーは永久番号として保存されるのだそうです。こうして社員との縁ばかりでなく、その夫人や両親との縁をも大切にする愛情が、働く人びとの心をどれぐらい強く揺り動かすか、想像に難くありません。

女性下着のトップメーカーのワコールには「信頼の壁」というタイル貼りのコーナーがあって、これは会社を築いてきた社員たちをいつまでも忘れないために、その手型やサインを焼き込んだタイルを一面に貼ったものだそうです。

あの会社の繁栄の裏に、こうした「縁を大切にする愛の精神」が秘められていることは、じつに貴重な事実だと思います。

また、主婦の友社の創立者である石川武美さんは、社員を家庭的に遇した人といわれます。昼食は全員で会食(ずっと給食)、一日には赤飯、月末にはうな丼、また、午後三時には必ずおやつがでました。

お中元・お歳暮(賞与という名を使わず)のほか、家族を対象として、正月には観劇料、四月にはお花見料を贈呈しました。

そうした空気を反映してか、同社を退いたOBの人たちは、必ず年に一回現社長や幹部社員たちとの、懇親会をもっています。

このような例は日本でただ一つといわれています。

いずれにしても、われわれの人生は無数の出会いの連続であり、累積であります。その一つ一つをおろそかにせず、自分を育てる栄養であると心得るべきでありましょう。

たとえ、その場では不幸な出会いのようでも、素直にそれに対処すれば必ずそれはプラスになるもので、これを「逆縁」といいます。『庭野日敬自伝』にも書きましたように、もしわたしの次女が嗜眠性脳炎(しみんせいのうえん)にかからなかったら、新井助信先生にめぐり会うことも永久になかったでしょう。

世の中とはそんなものなのです。

要するに、いちばん大切なのは素直な心と、他に対する愛情です。この二つはつねに無上の宝として胸に懐きつづけていたいものです。


「『素直な心』や『愛情』は、人生の現実問題においても、小さな出会いを思いがけない方向へ展開させるもの」と、開祖さまが教えてくださいます。私たちも振り返ると、「素直な心」になっているときや、他人に対してあるいは他人からの「愛情」(思いやり)によって、不思議な出会いだったなと思うこともあったのではないでしょうか。

今回は、「素直な心」と、「他に対する愛情(思いやり)」によって出会えたご縁を振り返ってみましょう。

次回までよろしくお願いします。

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