前回の続き、諸富祥彦先生(明治大学文学部教授)の「心に潜む固定観念」(「やくしん」(2010.10月))から学んでみたいと思います。
○関係性の中で変化する。
では、自分に向けた否定的な思い込みを持った場合はどうでしょうか。
「どうせ自分には無理だ」「才能が無ければ努力しても無駄だ」。よくそんな言葉を耳にしますが、その心の奥には、<もし努力して失敗したら立ち直れない>という心理が隠れています。
実はこうした思い込みも、他者へ向けた固定観念と根っこは一緒です。どうせ自分はと決めつけることによって自分を低位安定させているのです。
否定的な思い込みは、自分と他人のどちらに向いても、心の安定を求めるあまり、変化を受け入れることができません。結局は発展的な成長の芽を摘んでしまうことになります。
もし、そうした固定観念にしばられてしまったら、一度よく考えてみてください。なんのためにそうした固定観念を持ってしまうのかを。自分も他人も、決して一面的な存在ではないはずです。欠点もあれば長所もある。誰もが多面性を持った存在なのです。そして、実際にはそうした者同士が出会うことによって、常にお互いが変化し、成長していくのです。
仏教の「縁起観」では、すべてがつながりあっていて、それぞれの関係性の中でものごとが立ち現れてくるととかれています。わたくしたちは自分や相手の事を決めつけていますが、全ては関係性の中で変化していくのです。
つまり、自分や他人にむけたマイナスの固定観念は、そもそもが実態のないものなのです。ですから、自分の人生をより有意義なものにしていくためには、まず、否定的な思い込みにとらわれている自分に気づくことです。そのうえで、自分から他者と良好な関係を築いていくことが大切なのです。
自分や他人の良い面を引き出していくのは、そのときどきの関係性次第。あなたがどんな縁を結んで行くか、それが問われているのです。
固定観念も否定的な思い込みも根っこは一緒で、自分が相手や自分自身を「どうせ○○だから」と決めつけることで低位安定しているのですね。
しかし、諸富先生も述べていましたが、仏教ではすべてのものは「縁起」という真理、すべては関係性の中で変化をしていくことを教えていただきます。
否定的な思い込みにとらわれている自分に気づき、そのうえで、自分から他者と良好な関係を築いていくことが大切なことを教えていただきました。私なりに受け止めると、あれこれ考えて固定観念を作り上げているのは「すべて自分」と受け止め、「まず人さま」という気持ちで積極的に声をかけていくことが、固定観念を破っていくもとだと感じています。
今回は、私から積極的に声をかけていきましょう。
気づき、発見、疑問、感想等があれば、コメント入力してください。
次回までよろしくお願いいたします。
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