佼成新聞に連載されていた開祖さまの、『心が変われば世界が変わる-一念三千の現代的展開-』を紹介しています。今回も、皆さんと一緒に学んでいきたいと思います。
○諸法無我の真理に“合致”
われわれは自分だけの力で生きているのではなく、宇宙の万物に生かされているのです。自分を中心にして考えれば、無数の物や人に“持たれつ”して生きているのです。その恩恵を受けっ放しにして、こちらが他の存在に恩恵を与えることがなければ、つまり能動的に、“持ちつ”することがなければ、<持ちつ持たれつ>は完成しません。両方のバランスがとれないのです。ですから、他のために尽くすことはそうした根源的なバランスをとり、調和をつくり出す行いだからこそ、快さを覚えるのです。
とりわけ現実の人間性世界においては、利己という煩悩が盛んで、他人のためを思う心は一般的に薄いのが実情です。それだけに、心ある人々が積極的に他のために尽くしてバランスをとる社会的必要があるのです。従って、そうした積極的な奉仕の行いをすれば、心に覚える快さはまた格別のものがあるわけです。こうした快さは、その人自身の心を清め、暖める高貴な喜びですから、それを味わえば味わうほど人格が高まっていくのです。仏教で菩薩行ということを強調する根本の理由は、以上のようなところにあると思うのです。
昭和三十八年度の東大の卒業式に際して、当時の茅誠司(かや せいじ)学長が卒業生に与えられた言葉は、「人に親切を尽くしなさい」ということでした。これを新聞で読んで、わたしは心から嬉しく思いました。そして、茅さんは本当の意味で偉い人だと感服しました。なぜなら、日本で最高の学府とされている東大の卒業生に対して、そんな“平凡な”ことはなかなか言えないものです。「なにをいまさら古臭いことを……」とか、「ぼくらを小学生と同じように思っているのか」とかいう反発が返ってくることは必至だからです。それをあえてされた茅さんは、理論物理学者としてよりも、一人の菩薩として尊い方だと思うのです。そしてこの一言は、単に東大の卒業生ばかりでなく、日本人全体に与える痛切な<菩薩の言葉>だったと思うのです。
その前年に亡くなられた<雪の科学者>中谷宇吉郎(なかや うきちろう)理学博士は、臨終に際して遺言らしい遺言はされませんでしたが、奥さんに対してただ一言、「人には親切にしてあげなさいよ」と言われたといいます。じつに千万の言葉にまさる偉大な遺言だったと思います。
【わたしの所感】
最近、雪が降る日が多いのですが、その中でも朝早くから除雪作業にあたっている業者の方々、ゴミ回収をしている業者の皆さんの姿を見ると合掌せずにおられません。雪という不便な状況だから強く感じます。そのように思うと、私たちは、見えるところだけでなく、見えないところでも「持ちつ持たれつ」というバランスの中に生かされています。本当に有り難いことです。
目の前の人に喜んでもらえるように、できることを真心込めて取り組むことも、“持ちつ”の実践です。自分ができることに、積極的に取り組んでいきたいと思います。次回までよろしくお願いいたします。

写真は、吉川壽一先生の書です。
昨年の生誕地まつりの時に衣装を新調しましたが、その衣装の字を吉川壽一先生にお書きいただきました。
それを表装して、福井教会の玄関に飾らせていただいております。
福井教会の皆さんが丸い心で、心を一つにしていく様子を表現していただきました。
教会に参拝の際は、じっくりとご覧ください。
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