今日は六波羅蜜の最後、「智慧」(ちえ)」について、開祖さまの平成法話集『菩提の萌を発さしむ』から学んだ内容をお伝えしたいと思います。
「智慧」とは、宇宙と人生の実相(じっそう)、ありのままの相(すがた)を見通す澄み切った心の働きです。真理、真実にもとづいて正しい道を選んで生きることです。
この智慧は、今まで学んできた五波羅蜜を成就して得られる心の働きです。ここで少し復習をしたいと思います。
第1―「布施(ふせ)」慈悲の心で人さまに尽くすこと。とくに、多くの人に仏さまの教えを説いてあげること。
第2―「持戒(じかい)」身をつつしむこと。お釈迦さまが教えられた、人間と人間とのあいだを正しくつなぐ「道」を守ること。
第3―「忍辱(にんにく)」辛抱強くあること。いつも柔和な心を保ち、他から与えられる侮辱や迫害に怒ることなく、また、称賛されても有頂天にならないこと。
第4―「精進(しょうじん)」自分の使命を自覚し、価値あることを休まず、怠らずに行なっていくこと。
第5―「禅定(ぜんじょう)」環境の変化にふりまわされない、どっしりと落ち着いた心をもち、小さな「我(が)」を離れ、「宇宙のいのち」と一つになるよう精神統一を常に心がけること。
「智慧」は、この五波羅蜜を成就するとなるととても到達できないように思えてしまいます。しかし、開祖さまは「無量義経」の「十功徳品」の一節を取り上げて、次のように教えてくださいます。
ここで大事なところは、大悲の心を起こして、「悩み苦しんでいる人たちをお救いしよう」と心がけていると、六波羅蜜が十分にできていない人でも、六波羅蜜が自然に身についているというところでしょう。つまり、「人さまを幸せにしてあげたい」と願う「慈悲」の心から、そのときどきにふさわしい「智慧」が自然に湧いてくるのです。それが「仏さまのお手配」なのです。
また、次のようにも教えてくださいます。
伝教大師最澄は、「己(おのれ)を忘れて他を利するは慈悲の極みなり」と説かれましたが、そういう「慈悲」の心を常に心がけていれば、考えることが自然に仏さまの「智慧」に合致したものになります。それこそが、相手も救いつつ自分も救われる道を行く、最高の「智慧」であるといっていいでしょう。
目の前の人に「幸せになってもらいたい」「喜んでもらいたい」と一所懸命に取り組んでいく中で、出てくる相手を思う言葉や行動の中に仏さまの智慧を感じていきましょう。
次回までよろしくお願いします。
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